オーガニックで、ミニマルに。

有機にこだわる主婦の、食べること、暮らすこと、選ぶこと、守ること。

【感想】9月25日「子どもたちの給食を有機食材にする全国集会」に参加しました

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私達にもできる小さな「革命」とは?オーガニック給食を通して見る明るい未来。

f:id:KatieFue:20201020171222j:plain出典:fujiwara(写真AC)

 9月25日、「子どもたちの給食を有機食材にする全国集会 世田谷から考えよう学校給食」が開催されました。
 私はオンラインで前半一部のみの参加でしたが、画面から伝わる熱意はまさに圧倒的!全てのプログラムに加われなかったのが残念でなりません。
 というわけで、今回はぜひ感想をシェアさせてください。
 「給食もオーガニック」がこれからのキーワードです!
 ※今回は同イベント第1部における鮫田晋氏・堤未果氏の講演についてのレポートと感想です。登壇者の言葉は青い字でご紹介します。

katiefue-happy-housewife-life.hatenadiary.jp

▶ローカルに、ミニマムに

意外なメッセージ

 集会を通して私が受けたメッセージ、それは「オーガニックは地元から広めよう」というものです。
 地方議会にオーガニック農業や有機食材の意義を伝えること、そして小規模な運動をコツコツ続けること…
 規模の大きさではなく、小ささこそ大切だという言葉には「私にも出来ることはある!」と勇気付けられました。

 

地域から食を見直す

 世界の事情通も登壇される中、こうしたミニマルな活動の良さを印象付けられたのは意外かも知れません。
 ただ、グローバルな流れも元をたどれば「地域」から始まり、そして地域とは「個人」の集合体です。
 普段あまり意識しませんが、誰のどんな仕事を応援するかも一人ひとりが決めています。たった100円のモノも100万人が買えば1億円になるように、小さな消費の積みかさねも経済の原動力です。
 だからこそ、グローバリズムが浸透したいま地域から食を見直そう——次の2つの講演からは、このことの重要性がよく理解できました。


▶「学校給食 100%有機無農薬米を実現」(いすみ市農林課 生産戦略班主査 鮫田晋氏) 

f:id:KatieFue:20201020170904j:plain出典:cheetah( 写真AC)

「給食のお米が100%有機栽培」。
 食の安全を考える親にとって理想的な取り組みですが、これを実現したのが千葉県いすみ市です。
 プロジェクト開始からわずか4年での100%導入という実績も素晴らしいものですが、私は食と地域の関係性について深く考えさせられました。

有機農業=地域活性化の起爆剤

 講演によれば、いすみ市が有機稲作を推進するきっかけの一つとなったのが「農家の農業離れ」(=離農)という問題でした。
 そのむかし献上米の産地に選ばれた米どころにも、米価下落や高齢化による離農の波は押し寄せます。農業をやめる人が増えれば耕作放棄地も増加し、荒れた里山には野生動物がはびこってしまう…人の住みづらい環境に繋がりかねません。
 市はこうした現状に危機感を抱き、2012年「自然と共生する里づくり連絡協議会」を発足。自然を守ることで地域を立て直そうという取組みが始まりました。
  

雑草とのたたかいの末…

 こうした理念でスタートした有機稲作ですが、プロジェクトの道のりは厳しいものだったと言います。
 わずか22アール*1という規模で着手したものの、予想を上回る雑草の勢いに四苦八苦…
 この苦い経験から、2年目よりNPO法人民間稲作研究所の支援のもと徹底的に対策をされました。すると雑草の抑制に成功し、天敵も増えたことで害虫被害の防止にも成功したそうです(鮫田氏の次に登壇されたのは同研究所理事長の稲葉光圀氏。雑草対策の概要や効果は非常に興味深いものでした)。
 面積・取組み戸数も年々拡大し、2018年には23戸・2,000アールへと急成長をとげました。こうした政・民一体による努力の結晶が、まさに有機米100%の給食だったのです。

 

環境も改善

有機農業をやると、目に見えて環境がよくなるんです。」

 とおっしゃる鮫田さん。
 何気なく聞こえますが、これは地域と食の結びつきを教えてくれる深い言葉です。それは、有機農業が食と地域の好循環——すこやかな土地が作物を通じて人のからだを養うと同時に、地域そのものをも元気にしてくれる可能性を予感させるからです。

 

農薬の恩恵と代償

 国のルール(有機JAS)に則れば、有機農業とは自然の本来持っている力を高めると同時に、農薬や肥料といった外部資材の使用を最小限に抑える農法です*2
 一方、いま日本では農薬の使用が一般的ですが、例えば私の住む大阪府では水稲14回、キャベツ18回、露地栽培のナス(水ナス以外)では40回*3など、慣行レベルとして設定された回数には意外と多いものもあります(慣行レベルは自治体や作物によって異なります)。
 兼業化や高齢化が進むなか省力化の切り札とされる農薬ですが、代償の存在も忘れてはなりません。「生態系」が深刻な影響を受けるのです。

 

コウノトリの教え

f:id:KatieFue:20201020171422j:plain出典:しん0726写真AC

 野生コウノトリの絶滅をご存じでしょうか?全国どこにでもいたこの鳥は、1971年にその姿を消しました。乱獲や圃場整備など複数の原因が指摘されていますが、その一つが農薬です。
 コウノトリは水田のドジョウやカエル、バッタなどを食べますが、これらが農薬により汚染・減少したことや*4、また農薬がコウノトリの健康を蝕んだことも一因だと言われています*5

 

生物濃縮

 ここで農薬について補足させてください。かつて広く使われたDDTやドリン系などの残留性・脂溶性の高い農薬は、食物連鎖を通じて高度に濃縮される性質があります*6
 その結果、食物連鎖の上位にいる動物は、エサの減少・自身の汚染被害という2重の害を受けることになるのです。コウノトリも、食物連鎖では上位の生物です。
 コウノトリに話を戻すと、生物多様性の指標とも言える彼らが生きられなくなった土地は、人間にとってもベストな場所とは言い難いでしょう。そこに暮らす人がやがて口にするのも、その同じ土壌から生まれたものなのです。

有機農業で輝く地域

 効率化という恩恵の影で、日本各地の農村ではこうした自然のしくみが失われてゆきました。一方で、有機農業により「目に見えて環境がよくな」ったいすみ市では魅力的な地域づくりが進んでいます。
 例えば食育。有機栽培米を食べるだけでなく、環境・農業・食を一体のものとして学ぶ授業が展開されています*7。きっと子供たちの中には食や環境を主体的に捉える力が養われることでしょう。
 また、「有機米オーナー制度」*8など、都市部から人を呼びこむ取組みもされています。生産されたコメは「いすみっこ」ブランドで外部販売もされています。
 このように、いすみ市では有機農業をコアとして地域がまるごと活気づくような取組みがされているのです。

 

▶「アメリカ発の給食ビジネスと狙われる日本の子供たち」(国際ジャーナリスト堤未果氏)

f:id:KatieFue:20201021161747j:plain出典:acworks写真AC

 このように地域社会を巻き込んだ変革が進む一方で、現下のグローバル社会では産地に目を向けづらいのも事実です。国際ジャーナリストの堤未果さんは、こうした状況に抗うための「小さな活動」の意義を教えて下さいました。

アメリカ 低栄養な給食の実態

 講演ではまず米国の低栄養で安価な学校給食の実態が紹介され、その弊害の深刻さは耳を疑うものでした。
 いまアメリカでは子どもの肥満や二型糖尿病が増えており、さらには虫歯の悪化によって入れ歯を装着する若者もいるとのこと*9
 この裏には子どもをターゲットにした企業の広告戦略や、学校の予算削減をチャンスと見た給食ビジネスの存在があると言います。
 

巧妙な戦略 味覚への刷り込み

 たとえば、米国の子供が目にする年間4,600種もの広告。スマホ利用の低年齢化で広告との接点が増えるいま、自治体によっては食品CMから子供を遠ざけようという取り組みもあるそうです。
 また、子供にねだられれば与えたくなるのが親心。「3つ子の魂100まで」と言いますが、小さい頃に覚えた味は大人になっても忘れません。
 このように幼少時から刷り込みを行うことで味覚を固定化し、消費に駆り立てることこそ米国フード業界の狙いだと堤さんは言います。

 

まるでファストフード!米国の給食

 業界の触手は、学校にも及びます。
 学校給食の写真に並ぶハンバーガーやカラフルなお菓子、ナゲット等々…ファストフードを彷彿とさせる内容ですが、なんと牛乳にすら甘い味付けがされているとのこと。家庭でも外でも、子供は安価で低栄養な食事にさらされているのです。

「米国で起きたことは、今や2~3年で日本にやってくる時代です。

 この堤さんのお言葉に、身近な食環境について考えざるをえません。給食無償化にしても、実施自治体が増えるのは歓迎すべきことですが、保護者としては内容の充実も大切です。 
 米国の子供たちの現状も踏まえれば、若くして健康を失うことの重大さを親・子とも自分のこととして考えねばならない時代なのだと思い知らされます。

 

「小さく小さく」が合言葉

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  また、堤さんはいま盛り上がりつつあるオーガニック市場について重要な視点を示されました。それは、推進運動や流通は小さくあるべしということです。一体どういう意味でしょうか?
 堤さんの意見では、世界にオーガニックが広がること自体は確かに素晴らしいものの、一方でそれを販売する企業や推進運動の規模に注目すべきだと言います。なぜなら「小ささ」こそが成功のカギだからです。

「小さい運動はつぶせません。」(堤さん)

 堤さんによれば、社会運動はなるべく小さく行い、外部からの圧力をかわす必要があるとのこと。そして、地元にオーガニックが広がるよう働きかけることが大事だと言います。私たちにとって一番身近な政治の場、つまり地方議会がその窓口です。

 

▶まとめ

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出典:OFF写真AC 

 今回は、「子どもたちの給食を有機食材にする全国集会」の感想を書かせて頂きました。全ての講演を網羅できないのが残念なほど、密度の濃い時間でした。

ミクロの視点を持つこと

 食の問題を考える時、どうしても国や世界の潮流を意識せずにはいられません。もちろんそうしたマクロな視野は重要ですが、同様に「地域レベル」というミクロ視点をあわせ持つ必要性を感じた集会でした。
 同時にこのことは、「問題意識はあるがどうしていいか分からない」という人たちにとって、くらしの範囲内で活動できるのだという力強いメッセージです。
 集会では地元議会に声を届けることの大切さも発信されました。議員さんの中にはメールアドレスを公開する方もおられ、昔に比べて繋がりやすい時代だと言えます。この環境を活用しない手はありません。

 

オーガニックの萌芽は地方から

 また、オーガニックに目覚めた自治体の存在には勇気をもらえます。
 千葉県いすみ市だけでなく、有機JAS認証の作物を取り入れた愛媛県今治市、また最近では有機農業の推進を掲げる京都府亀岡市など*10、オーガニックの種は着実に芽生えつつあります。
 そして地域が変われば、そのさざ波は周囲に伝わるでしょう。もちろん、そうした地域をかたちづくるのは「あなた」であり「わたし」です。

わたしもあなたも「革命家」

 自分の足元に目をやり、半径数メートルから変えてゆくこと。そしてそうした小規模な取り組みをこそ応援すべきこと…。

この場にいる皆さん一人ひとりが、私には”革命家"に見えます!

 堤さんのこのお言葉が、とても力強く響きました。
 私も微力ながら、小さな「革命」を積み重ねたいと思います。

 

▶署名活動(2020/10/29追記)

 今回の共催団体のひとつ「世田谷区の学校給食を有機無農薬食材にする会」が署名活動をされています。
 世田谷区だけでなく、全国から賛同者を募集されていますので紹介させて下さい。

学校給食に使用する食材及び調味料を、段階的に主食の米・小麦等から始めて100%を目指し、有機無農薬の食材に切り替えること、その進捗を管理すること、遺伝子組み換え及びゲノム編集された作物を使わないこと、また、以上の方針を条例化していただくことを、以下の理由により要望します。(要望書より抜粋、後略)

 東京23区で最多の約92万人*11を誇る世田谷区で有機食材100%の給食が実現すれば、周囲へのプラスの影響も期待できるでしょう。
 何より、こうした運動があること自体、食の安全を気にかける全国の人にとって心強いものです。
 学び・遊びの時間もさることながら、安全な食べ物を子供たちのために確保するのは大人の役目です。私もキャンペーンに賛同させて頂きました。この動きが全国に広まることを願ってやみません。

 

(文 鈴木かや)

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当日の登壇者、山田正彦 元農相が食の危機を警告。

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農薬がもたらした鳥類への影響を克明に記録。

*1:1アール=100平方メートル。22アール(2,200平方メートル)はサッカー場(国際大会)の約1/3に相当します。

*2:農水省「有機農産物の日本農林規格」第2条参照。2020年10月23日閲覧。以下同。

*3:いずれも大阪府HP「特別栽培農産物に係る表示ガイドラインの慣行レベルについて」参照。

 なお、ここで言う「回数」とは節減対象農薬成分x回数の「のべ回数」です。例えば2成分を2回ずつ散布すると計4回としてカウントされます。なお、特別栽培では農産物の有機JAS規格 別表2に記載の農薬はカウントされません。

*4:東淳樹(2017)「農村が育む鳥類の多様性」農村計画学会誌, Vol.35, No.4, pp.477-481, pp.478.

*5:本田裕子・山路永司(2006)「農業者の視点から見た野生生物保護—豊岡市コウノトリの野生復帰を事例に—」農村計画学会誌, Vol. 24, No. 4, pp.237-244, p.238.

*6:これらの物質は残留性有機汚染化合物(POPs)に指定され、生分解性の低さから長期的に環境中に留まり、しかも常温で気体化しやすいため気流や海流に乗って世界規模で移動します。POPsはストックホルム条約によって世界的に廃絶へと動いていますが、DDTはマラリアを媒介する蚊の駆除目的で現在でも使用されています(WHO (2011) "The use of DDT in malaria vector control. WHO position statement" なお、日本では使用禁止)。規制物質については右記参照。経産省「POPs条約」

*7:千葉県いすみ市農林課「いすみ市の有機農業推進について~水稲および園芸作物の有機栽培~」p.13

*8:いすみ市HP「2020いすみ米オーナー制度 募集 (2月28日(金)まで)」

*9:日本と違って医療保険未加入者が多い米国では、高額な歯科治療費の払えない方もいらっしゃるため。

*10:亀岡市「令和2年度施政方針」

*11:日本人+外国人の総数。2020年10月1日現在。右記参照。世田谷区内全域の人口と世帯数 | 世田谷区ホームページ 2020年10月29日閲覧。