オーガニックで、ミニマルに。

有機にこだわる主婦の、食べること、暮らすこと、選ぶこと、守ること。

私達はなぜ躊躇ってしまうのか?認知心理学的「脅し」の基礎知識。

ためらいの裏側を知れば、もう怖くない

「意見があるけれど、言い出せない」

人やサービスに対して、本音を言えずモヤモヤしてはいませんか?

こうした躊躇いは、実のところ「相手からの見えない圧力=脅し」によって引き起こされています。

このメカニズムを知ること、それは心の自由を手に入れることに繋がります。

そこで今回は、身近な事例をもとに「脅しとは何か」「どうしたら避けられるか」を書いてみたいと思います。

見えない脅し、「アンカリング」

▶「個人情報」を求められるとためらってしまう

「ご意見の送信には、個人情報が必要です」

こういった文言は、お店や会社などの問い合わせフォームでよく目にします。

躊躇なく名前や住所を書く人もいるでしょうが、抵抗を感じる方も多いはずです。

相手にとって好意的な内容ならばともかく、クレームや改善を求める場合は「個人が特定されないように」と慎重になるのが普通。

「個人情報」という言葉の圧に負けて、送信フォームを閉じてしまい悔しい思いをした…私にも、そんな経験があります。

 

▶見えない「脅し」の正体

相手の想定通りに動いてしまう

しかし、これはあなたの心が弱いからではありません。

むしろ、相手が「人の心のクセ」を利用した作戦を仕掛けたからこそ、このような行動を取ってしまうのです。

これこそが、今回お話する「見えない脅し」です。

 

アンカリング

「見えない脅し」、それは一体何でしょうか?

これは、合理的判断力を奪うために、相手の行動に先んじて与える情報のこと。認知心理学では、こういった脅しを行うことを「アンカリング」*1と呼んでいます。

アンカリングは単語「アンカー(anchor)」が元になっていますが、これは船のいかりのこと。つまり、相手の潜在意識に特定の条件という「錨」を投げ込み、相手の判断力を制限してしまうのです。

 

▶アンカリングからメッセージを読み解く

では、「個人情報が必要です」という言葉には、具体的にどんなアンカリングが用いられているのでしょうか?この表をご覧ください。

見かけ上のメッセージ

個人情報が必要です
アンカー 個人情報を提供しないと、意見は言えません
真の意味

もしあなたがメッセージを送ったら、私は大切な情報を握ることになります。

その情報をどう使うかは私の勝手。

悪用すればどんなことだって可能です。
そんなリスクを犯してまで意見したいのですか?
黙っているほうが身のためですよ。

いかがでしょう?

こうやって解剖してみると、たった1文にこんなにもたくさんのメッセージが込められていることが分かります。

「個人情報を入力してください」とは、つまり「不都合な意見を送らないでください」というメッセージになるのです。

 

▶アンカリングを逃れるためにできること

まず疑ってみること

では、一体どうしたらこのアンカリングを回避できるのでしょうか?

それにはまず、「本当に、相手の言った通りにする必要があるのか?」と考えてみることです。

例えば、日本には行政に意見ができる「パブリックコメント」という制度があります。この場合、募集要項には名前や住所の明記を求める文言があります。

しかし、入力フォームに進んでみると、あくまで任意であることが分かります。

また、私は以前千葉県市川市に意見を送りましたが、この場合も実際の情報を書かなくても返信まで頂けました。

必ずしも、全てのケースで必須とは限らないのです。

katiefue-happy-housewife-life.hatenadiary.jp

 

失敗を恐れないこと

そして、次に大切なのは、失敗を怖がらずに自分の思ったとおりにやってみること。

「何も書かずに送信したら、エラーメッセージが出るのでは?」

「名前を書かなかったら、相手にしてもらえないかも…」

そう思うのは自然なことですが、だからといってどんな不利益があるんでしょうか?

失敗しても、それでいい。そもそも人生、思い通りにいくことなどそんなに多くありません。それよりかは、ダメ元でやってみて、うまくいったら儲けもの。

こう考えたら、一気に気持ちが軽くなりませんか?

 

▶アンカリングを意識して暮らしてみる

アンカリングは、問い合わせ窓口だけでなく、日常のあらゆる場面で用いられています。

自分のもともとの考えを曲げなければならない。そんな場面に出くわしたら、「あれ、これってアンカリングかな?」と思ってみてください。いつもの日常が、少し変わるかもしれません。

 

katiefue-happy-housewife-life.hatenadiary.jp

 

*1:

交渉学ノススメ

交渉学ノススメ

  • 作者: 安藤雅旺,特定非営利活動法人日本交渉協会
  • 出版社/メーカー: 生産性出版
  • 発売日: 2017/08/07
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログを見る
 

pp.162ff.に、さまざまなタイプの「脅し」が載っています。主にビジネスの現場を意識した内容になっていますが、私たち主婦の日常生活にも深く関係しているものです。