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エシカルって何?~搾取とグローバリズムから考える「自分のため」の消費~

エシカルの意義を知り、自分を守ろう!

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最近「エシカル」という言葉を聞くようになりました。
なんとなく良いイメージはあっても、値段も高いしよく分からないのが事実。でも、こうした商品が「ほんとうは自分のため」だってご存じですか?
今回は身近な製品を例にとり、エシカル商品の意味についてご説明します。

▶エシカルとは?

そもそもエシカルとは何でしょうか?
直訳すれば「倫理的な=人間として従うべき規範にのっとった」という意味ですが、専門家によると「持続性、社会的責任に配慮する商品を生産あるいは購入すること*1だとされています。
具体的には、このようなものに配慮した商品のことです。

「フェアトレードの他に、環境(エコ)、社会的正義、ジェンダー、有機農業、自然エネルギー、ベジタリアン、ビーガン、リサイクル等々」*2 

 

▶「エシカル」を選ぶべき理由

「自分が大事にされる社会」を作るため

では、なぜエシカルな商品を選んだほうがいいのでしょうか?それは、エシカルでないものを買えば買うほど「自分が大切にされない社会」を作ることになってしまうからです。
——ん?どういうこと?
こう思った方は、これから書くことをぜひ読んでみてください。

 

搾取を前提とした社会

わたしと社会とのかかわり

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謎解きのために、まずは自分と社会とのかかわりを考えてみましょう。
上の図をご覧ください。これは私たちの経済活動を表したものです。「わたし」という個人は消費者である一方、働き手としてモノやサービスを提供する側に回ったりもします。
100%「買うだけの人」「作るだけの人」は存在せず、場面によって2つの顔を使い分けているのが分かりますね。

 

「買う」という行為の意味

では、「モノを買う時のこと」を思い浮かべて下さい。似たような商品がならんでいた場合、何を基準に選ぶでしょうか?
機能、ブランド力、デザイン…どれも同じなら、どうしても「値段」に目が行くものです。
ここで注目してほしいのは、この商品選択のときに「売り手(=企業)」とのコミュニケーションが生まれるということです。
安いものを選ぶということは、「安いほうが売れる。高ければ売れない。」という売り手へのメッセージ。私たちがモノを買う時、実はお金と一緒にこうした意見を伝えているのです。

 

安いほうが売れる→コストを削る

さて、このメッセージを受け取った企業は何を考えるでしょうか?
それは「どうやったらもっと安くできるか」ということです。
商品の値段を下げる方法はいろいろあり、もちろん自分の取り分(利益)を減らすこともできますが、それでは会社が成り立ちません。なぜなら、企業とはもともと儲けを追い求める存在だからです。
そのため、彼らは「コスト削減」に手をつけることになります。

 

要求が生産者を苦しめる 

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コストとは、簡単にいえばモノを作るためにかかる費用のこと。
これを削ろうとすると、必然的に下のような選択肢を取らざるをえません。そして、その影響ははたらく側に押し寄せます

  • もっと安い材料を探す
  • はたらく人の給料を減らす
  • 大量に作って1個当たりを安くする 等々…

もちろん、もともと過剰な投資をしていたのなら、こうした対応も悪くないでしょう。
しかし、利益追求が企業のテーマである以上、そんなムダは考えにくいことです。それに、仮にもともと過剰投資だったとしても、「より安く」の声が続けば理不尽なレベルまで下げざるを得ません。
こうして、私たちが背景を知らずに安さを追い求めれば、それが生産者をつぶす圧力となるのです。

 

▶事例:コットン栽培での搾取

貧困と搾取

では、作り手にのしかかる苦しみとは一体どんなものでしょうか?身近な素材である「コットン」を例に見てみましょう。
肌触りがよくお手頃なコットン。しかし、原料となる綿の栽培が、人と環境にとても大きな負担を強いていることはあまり知られていません。
山口真奈美さん(2017)はそうした深刻な現状を挙げ、打開策としてのエシカルファッションに関する認証を解説されています(*3。以下、青字部分は要約)。

  • 農薬・化学肥料の多用→土壌・地下水汚染、健康被害
  • 灌漑→地下水の枯渇
  • 遺伝子組換え種子の使用→農薬依存*4
  • 貧困→教育機会の喪失、児童労働

 

児童労働

中でも、子どもたちの受ける影響は「知らなかった」では済まないくらい悲惨です。
オランダーインド委員会のレポート*5からは、児童労働なしには成り立たないコットン栽培の現状を知ることができます。

 

安くて効率の良い労働力

コットン生地は綿糸から織られますが、その原料はコットンボール。つまり、綿の実です。
植物の実がなるには「受粉」が必要ですが、コットンの場合はすべて手作業でなければなりません。それはいま主流のハイブリッド・コットン*6人工受粉でないと育たないためです。栽培にかかる時間の9割がここに費やされるほど*7、受粉は過酷な作業です。
子どもたちは「安くてよく働き、言いつけを守るから」という理由で*81日8時間以上も働かされ*9、当然学校には行くことはできません*10

  

子どもの人生が奪われる

また、労働は時間だけではなく、健康すらも奪います。
世界の農薬の40%以上がコットン栽培に使われると言われますが*11、1日のほとんどを農場で過ごす子どもはこうした薬剤の被害にもさらされるのです。
激しい頭痛や吐き気、けいれん…命を落とす子もいます*12。彼らが大人になったとしても、適切な賃金をもらって安全に働けないかぎり、次の世代も同じ運命は避けられません。
もちろん業界もこうした状況を無視しているわけではありません。企業が農場との契約に「子どもを雇用しない」という条件を盛りこんだり、業界団体が児童労働廃止を決議するなど、対策の動きはあります*13。また、もちろんオーガニックコットンの認証・認定団体は児童労働に反対です。
ただ、世界的に見れば決して足並みが揃っているとは言えず、問題の根深さを感じざるをえません。
自分のために買うモノが、実はこうした搾取のもとに作られているという現実。これはコットンだけではなく、野菜や食肉、生活用品にも言えることなのです。

 

▶グローバル社会が招いた分断 

コミュニケーションの欠如が招くもの

消費者として、これはあまりに不本意なことですよね。なぜなら、私たちはただ「安くて便利」を求めただけで、生産者を苦しめるつもりなど決してないからです。
でも、これこそが現代社会の落とし穴だと知っていますか?
もしコットン農場の様子が報道されたり、女の子たちが助けを求めてきたならば、心を痛めて「何かしたい」と思うことでしょう。
ところが、今の世界ではこれができません。作り手と買い手にコミュニケーションがなく、相手のことを考えられないからです。

 

見えない=相手のことを考えない

グローバル社会」という言葉があります。
それは世界規模でモノやサービスをやりとりする社会のことで、まさしく現代がこれにあたります。資源が乏しく、人件費も高い日本は、暮らしを維持するためにこうした海外調達に頼ってきました。
たとえば、衣類に関しては輸入浸透率が97.7%(2018年データ*14)であり、また食料自給率も40%を切っている*15のは周知の事実です。
こうして遠く離れた国からモノを買っていると、作る人と買う人は直接対話などできません。
さらには、お互いの姿が見えないために、「相手がいる」という当たり前のことすら想像しづらくなっています。ましてや、相手の置かれた状況を思いやることができるでしょうか?
遠く引き離されてしまった作り手と買い手。グローバル社会とは、大きな恩恵の影にこうした分断を秘めているのです。

 

自分も搾取される

 

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そして、こうした分断は私たち自身をも搾取に巻き込みます。なぜなら、私たちは消費者として生産者を追いつめる一方、「見えない消費者からプレッシャーを受ける生産者」でもあるからです。
上の図を見てください。
安くて便利なモノを買う時、わたしは「いい買い物をしたなぁ」と思います。
しかし、それは搾取する企業への応援であり、搾取を前提とした社会づくりへの加担に他なりません。
そこで働く私たちは、ちょうどコットン農場の話のように「安くてよく働き、言いつけを守る」存在として扱われることになります。近年問題化している長時間労働は、この状況を端的にあらわしていると言えるでしょう*16
人間としての幸せが犠牲となり、自分のためにとった行動が回りまわって自分を苦しめる。そんな社会は、1日も早く終わらせなければならないのです。

 

▶解決策としての「エシカル」

思いやり、思いやられる社会へ

こうした搾取のサイクルを断ち切り、モノの売り買いに「思いやり」を取り戻すことこそエシカルの目的です。
土地の生態系をまもり育てる「オーガニック」の農法や、貿易での対等なパートナーシップを重視する「フェアトレード」など、いまや様々な枠組みがエシカルな商品として注目されています。
たとえば、コットン栽培へのオーガニック認証には、農薬・化学肥料の制限等の厳しい条件があり*17、人にも環境にもやさしいモノづくりが求められています。
またフェアトレードは「より公正な国際貿易の実現をめざす、対話・透明性・敬意の精神に根ざした貿易パートナーシップ」と定義されるとおり*18、作り手の経済的自立にくわえて買い手との関係構築も大切な要素です。
こうしたエシカル商品は、いまや衣類だけでなく食品や雑貨にも広がり、くらしに取り入れやすいものも増えています。

 

買う側の責任も

ただし、「オーガニックやフェアトレードと書いてあるからOK」ではありません。
買う側もそれが本当にエシカルか監視する責任があり、これを怠れば新たな搾取が生まれてしまうからです。
たとえば日本には法的根拠のあるオーガニック衣類の基準がありませんが*19、そのせいで裏付けの定かでない「オーガニック」製品が流通しているのも事実です。
こうした状況を知ったうえで商品を吟味することも、これからの消費者に求められるスキルだと言えるでしょう。そして、それこそがいずれ自分自身を救う力になるのです。
 

▶まとめ

モノを作る人と買う人の、それぞれの人生や幸せ。一見まったく無関係に見えて、実は深く繋がっていることがお分かりいただけたでしょうか?
生きづらい社会、しんどい社会…これは、私たち個人と無関係に成り立っているわけではありません。むしろ、「安いものを選ぶ」という、自分を守るために取ったはずの・・・行動が、知らないうちに誰かを苦しめ、それがブーメランのように自分に戻ってくるのです。
このサイクルを断ち切り、もう一度思いやりと幸福にみちた世界を作るのが「エシカル」の理念に他なりません。
次に買い物をするとき、ぜひ「これを作った人はどんな思いだろう?」と考えてみてください。それが、自分を守る第一歩です。

*1:長坂寿久編著『フェアトレードビジネスモデルの新たな展開 SDGs時代に向けて』第一章「フェアトレードとフェアトレードタウンの今—基礎知識」p.36

*2:同上

*3:山口真奈(2017)「エシカルの認証制度」廃棄物資源循環学会誌, Vol.28, No.4, p.287

*4:補足説明:なぜ遺伝子組換え種子が農薬と関係あるのでしょうか?それを理解するカギは「除草剤耐性」にあります。
遺伝子組換えコットンとしては害虫毒性のBtコットンが有名ですが、実際には除草剤耐性の品種も発売されています。つまり、除草剤をかけても枯れないという意味です
(害虫毒性と複数の除草剤への耐性を兼ね備えた品種も存在します。下記URL参照。)
除草剤耐性品種の問題は、「除草剤に対して抵抗性をもつ雑草が次々と生まれ、いたちごっこになる」という点にあります。本来は除草剤で一網打尽にできるはずが、雑草の反撃ともいえるこうした現象によって「除草剤を使えば使うほど、もっと除草剤をまかねばならない」という負のスパイラルに陥るのです。それが本文で述べた「農薬依存」の意味です。
詳しくはアンディ・リーズ著、白井和宏訳「遺伝子組み換え食品の真実」(2013)白水社、p.87以降をご覧ください。

Bayer社HP「Roundup Ready® Flex Cotto

同上「Bollgard® 3 ThryvOn™ Cotton With XtendFlex® Technology」

*5:

ダヴルリ・ヴェンカテシュワルル著、オランダ―インド委員会発行(2015)、NPO法人ACE訳(2016)「コットン農場の忘れられた子どもたち インドのハイブリッド・コットン種子生産における児童労働と低賃金の問題」2020/4/22閲覧。

なお、レポートの紹介ページは右記をご覧ください。特定非営利活動法人ACE「コットン種子生産における児童労働と最低賃金の問題についての調査結果を発表」

*6:交配種のこと。うち9割以上が遺伝子組換えのBtコットンです。通常の交配も遺伝子組換えも、人工授粉が必要な点は同じです。上掲書、p.16

*7:上掲書p.22

*8:Dr. Davuluri Venkateswarlu, Seeds of Bondage: Female Child Bonded Labour in Hybrid Cottonseed Production in Andhra Pradesh, SECTION IV.  "One girl can do the work of three adults."

Seeds of Bondage: Female Child Bonded Labour in Hybrid Cottonseed Production in Andhra Pradesh「女の子が一人いれば、大人三人分は働けるんだ」という農場経営者の言葉が印象的です。

*9:上掲書、p.9

*10:同上、p.10

*11:The True Cost, ENVIRONMENTAL IMPACT "Cotton production is now responsible for 18% of worldwide pesticide use and 25% of total insecticide use. " https://truecostmovie.com/learn-more/environmental-impact/

2020/4/22閲覧。

*12:同上、p.10。

*13:ダヴルリ・ヴェンカテシュワルル(2015)p.27f.

*14:繊維産業流通流通構造改革推進協議会 FISPA便り「輸入浸透率97.7%に上昇」

FISPA便り「輸入浸透率97.7%に上昇」 - FISPA|繊維産業流通構造改革推進協議会

*15:2019年はカロリーベースで37%。

日本の食料自給率:農林水産省

*16:事実、20~30代を対象にしたある調査では、女性の約2割、男性の約4割が月200時間以上もの長時間労働をしており、その多くが「もっと早く帰りたい」と思っている現状が分かっています。20〜30代正社員の月の平均労働時間に関する実態と意識 | 人材・組織開発の最新記事(コラム・調査など) | リクルートマネジメントソリューションズ

*17:たとえばアメリカのUSDAでは「収穫前の最低3年間は禁止資材を使わない」などの規定があります。

USDA Organic Standards

*18:長坂寿久編著『フェアトレードビジネスモデルの新たな展開 SDGs時代に向けて』第5章「フェアトレードとエシカルトレード—ETIの取組みから」渡辺龍也 p.154f.

*19:農畜産物とその加工品には有機JASという基準があり、農水省から認定された登録認定機関が事業者への認証を行っています。もちろん法的根拠のある基準なので、違反には罰則があります。
しかし、衣類は経産省の管轄となるため、ガイドラインはあっても法的に取り締まることはできないのです。
縦割り行政の弊害とも言えますが、いち早く分野横断的な基準が整備されることを願うばかりです。